補助清掃器具について

季節も夏に差し掛かり、一気に暑くなってきましたね。季節の変わり目や暑さで体調を崩しやすい季節かと思います。休息と活動のバランスをうまくとりつつ、健やかに過ごしていきましょう。
さて、口腔内の健康は保つことは、お口以外の体の健康にも繋がります。なるべく多く自分の歯を残すことで、美味しい食事を楽しんだり、日常生活を生き生きと送ることができます。
また、よく噛むことは認知症予防にも繋がると言われています。よく噛むことで脳に刺激が与えられ、脳の様々な部分が活性化されます。
そして、脳に血流も良く流れるので、必要な酸素や栄養が行き渡ります。これらのことから、認知症予防が期待できると言われています。
お口の健康を保つには、定期的な歯科検診に加えて、日々のセルフケアが大きな役割を果たします。正しく丁寧なブラッシングはもちろんですが、ブラッシングの他にフロスや洗口液などの清掃補助器具を上手に使うことで、セルフケアの効果を最大限に得ることができます。
今回はお家でできるセルフケアの中でも、清掃補助器具についてお話ししていきたいと思います。

なぜ、歯ブラシだけではだめなの?
しっかり歯磨きをしていたのに、歯科での定期検診で汚れを指摘されたことや、虫歯になってしまった、などの経験はないでしょうか?
残念ながら正しいブラッシングをしていても、それだけでは歯の汚れを取り切ることができません。これは、次のことに関係があると言われています。
①歯の特殊な構造
歯は、平坦で真っ直ぐなわけではありません。歯茎の際の部分から立ち上がり、真ん中部分で丸みを帯びて、切端部分にかけて平坦な形に戻ります。その丸みを帯びている部分が歯と歯の間の隙間が最も狭いところです。
この部分の汚れは歯ブラシで取り除くことができない部分です。また、歯と歯の間は食べカスが挟まりやすい部分でもあるため、汚れを溜めたまま放置すると、虫歯や歯周病の原因になります。
②歯並び
歯並びには人それぞれ個性があります。特に顎が小さく、歯が並ぶスペースが狭いとガタついてくる場合があります。その部分は特に歯間部のスペースが狭いため磨きづらいです。
③被せ物や詰め物をしている
過去に歯の治療経験があり、被せ物や詰め物が入っている場合、その部分が再び虫歯になってくる場合があります。
被せ物の経年劣化により、歯と被せ物の間に小さく隙間ができ、そこに汚れが溜まり、虫歯になってしまうことや、詰め物をしている部分が清掃不良になることで、ご自身の歯の部分が虫歯になり、そこから内側に虫歯が広がってしまう、といったことが原因として挙げられます。
経年劣化によるものは、定期的な歯科検診によって発見に繋がります。ただ、被せ物や詰め物の部分は清掃が難しいと考えられる方が多いようです。
ブリッジという、歯の欠損部分を補うような被せ物は、特に清掃が難しいという声を患者様から頂きます。
ブリッジは、歯の欠損部分を中心に人工歯を作り、両隣の歯を支えにし、連結した形のものです。連結しているので、本来存在する歯の隙間がなく、特に人工歯と歯茎の隙間は汚れがかなり詰まります。その部分の清掃は必須ですが、なかなかできていない方が多いです。
③親知らずがある
親知らず部分は清掃不良になりやすいです。特に、横向きに生えている親知らずとそのひとつ手前の歯の隙間は歯ブラシだけで清掃することは難しいため、補助器具が必須となってきます。
このような理由から、歯ブラシだけでの清掃では口腔内の清掃環境を良好に保つことは難しいです。
どのような清掃補助器具が有効なの?
それでは実際にどのような補助器具が何に有効なのかを交えて紹介していきます。
フロス
歯と歯の間の掃除に適しています。糸が何本か連なっているため、その糸にブラッシングだけでは取り除けなかった汚れが絡まりつき、歯間部を清潔に保ってくれます。
また、ブリッジやインプラント専用のフロスもあります。ブリッジ、インプラントはいずれも歯のない部分が存在し、歯のない部分と歯茎の間に汚れが溜まりやすいため、それに適したフロスを使用することで歯茎の状態も健康に保つことができます。
②歯間ブラシ
こちらも歯と歯の間に通すことで汚れを落とす効果があります。フロスは歯間部の最も狭い部分の汚れを落とすことができますが、こちらは歯茎近くの少し隙間が広い部分に通すことで、ブリッジ部分や、歯茎が下がっている部分の清掃にも有効です。
③舌ブラシ
舌の表面には、舌苔と呼ばれる汚れが沈着します。これは、口臭の原因の大部分を占めていると言われています。舌ブラシでこまめに掃除することで舌苔の沈着を防ぎ口腔内を清潔に保つことができます。
④洗口液
洗口液にも様々な種類があります。
•ブラッシング及びフロス後の仕上げ
殺菌成分の含まれた洗口液を使用することでお口の中を長時間清潔に保つことができます。
また、歯磨剤に含まれるフッ素の歯への沈着をより長くするために、ブラッシング後30分程、時間を置いてから洗口液を使用するか、ブラッシング後のうがいを水の代わりに洗口液で行うことも効果的です。
•就寝前のうがいで使用
高活性殺菌成分の含まれるものを使用することで、長時間抗菌作用を持続させ、虫歯を防ぐだけでなく、起床後の口腔内の不快感を軽減させることができます。
•飲食直後の使用
日中のブラッシングが難しい方や、虫歯になりやすい方に適しています。
食事後は口腔内に酸が多く生成され、その酸によって歯が溶け出す、脱灰と呼ばれる現象が進みます。その脱灰を防ぐために唾液には酸を中和させる機能があります。
しかし、様々な原因で唾液の緩衝作用がうまく働かない場合があります。そこで虫歯を予防する手助けになるのが洗口液です。飲食後すぐに使用することで高い緩衝作用が期待できます。
いかがでしたでしょうか。今回はセルフケアの中でも清掃補助器具についてお話しして参りました。こちらの記事が少しでも皆様のお口の健康を保つ手助けになれば幸いです。補助器具を有効に使用し、より良いセルフケアを目指していきましょう。

コラム執筆者
パールホワイトニング肥後橋デンタルクリニック院長 歯科医師 田中久弓
済生会中津病院口腔外科勤務後、一般歯科医院にて診察を行う。2017年から全国の歯科医院にホワイトニングの技術を教える講師が運営する、ホワイトニングサロンBeauteでホワイトニング専門歯科医師として勤務。2019年にパールホワイトニング肥後橋デンタルクリニックを開院し、「ホワイトニングが当たり前の世の中にする」ために活動しています。